オセアニアの今―伝統文化とグローバル化

サモアを中心に40年以上オセアニア研究に携わっている山本真鳥さんが、オセアニアの島々の人々と続けてきた交流の中に見えてくる「風景」を余すところなくつづります。

第14回 クーデターと民族紛争

オセアニアは太平洋の領域にある島々とオーストラリア大陸を含んだ地理的領域で、太平洋すなわちPacific Oceanはまさに「平和の海」という意味である。この海域にヨーロッパ人としては始めて出会ったマゼランが、”Mar Pacifico” と名付けたのがその由来とい…

第13回 オセアニアの環境―沈む島とゴミ問題

環境問題は私が必ずしも得意とする分野ではない。しかし、オセアニアの今を語るにあたって全く言及しない、というわけにはいかないと思い、私の持っている乏しい知識を寄せ集めてこの13回を書いてみる。オセアニアの環境問題と一口にいっても、本当はかなり…

第12回 太平洋諸島と疫病

ようやく新型コロナウィルスの第一波がおさまってきたようだ。まだ今後も第二波、第三波とあるかもしれず、危機感を払拭することはできないが、多少明るさが戻ってきている。さて、日本で感染者が少しずつ増えつつある頃、2月7日には、サモア独立国では、日…

第11回 トロブリアンド諸島の謎

トロブリアンド諸島といっても一般の方々はご存知ないと思うが、人類学者を名乗りながら、トロブリアンド諸島を知らない人はもぐりである。というのは、アメリカ人類学の父フランツ・ボアズに並ぶイギリス社会人類学の父ブラニスラフ・マリノフスキーが参与…

第10回 『ファミリーツリー』とハワイの土地

土地制度は社会の根幹をなすものである。ヨーロッパ人が初めて訪れたとき、ハワイは島ごとに王と王族、首長、平民(および若干の奴隷)に身分の分かれた階層社会をなし、島対島の勢力争いが随時生じている状況であった。封建的な土地制度がこの社会の基盤で…

第9回 2本の『モアナ』映画

2017年3月にディズニー制作のアニメ映画『モアナと伝説の海』(原題Moana)が日本でも公開されたが、その1年後の2018年には、もともと1926年に公開されたサモアの伝統的暮らしを描くドキュメンタリー映画『モアナ、南海の歓喜』のデジタル版が日本でも公開さ…

第8回 日本に建ったサモアの家

2019年12月8日に、ファレ・テレ(サモア式家屋の中の高位首長の家)が完成して竣工式を行うという知らせをもらい、その儀礼のために愛知県犬山市にあるリトルワールドを訪問した。サモア式家屋は、サモアでも公共の建物を除いて最近は減りつつあり、国外では…

第7回 航海術の復興

ディズニー・アニメ映画『モアナ』を見た人々は、ポリネシア人が海に親しみ、航海を苦もなく行っていた様に印象づけられたかもしれない。太平洋のど真ん中*1で暮らしていた人々は、当然のように海とともに生きてきた。ポリネシア人がどのようにして現在のポ…

第6回 文化としてのタトゥー

前回ラグビー・ワールドカップの話題を取り上げたが、9月15日には、国際ラグビー連盟から日本に結集する選手やラグビーファンに、日本ではタトゥーは覆うなどして、日本人に攻撃的イメージを持たれないように気をつけるようにとのメッセージが発信されたとい…

第5回 ラグビー! ラグビー!

オリンピック東京大会に先駆けて、本年9月20日にラグビー・ワールドカップが日本で開幕する。44日間、世界で予選を戦ってきた選りすぐりの20カ国のチームが日本に集まり、世界一をかけて戦うことになる。世界中の名だたるラガーマンの集まるこの祭典は、ラグ…

第4回 脱植民地化と文化の創造

オセアニアは島嶼部を中心に4年に1度の芸術の祭典がある。今回はこの祭典を中心に語ろう*1。祭典とは太平洋芸術祭*2である。前開催は第12回でアガニャ(グアム)、2016年のことであった。この次は来年の2020年6月に、ホノルル(アメリカ合衆国ハワイ州)で第…

第3回 オセアニアのお金の話

さて、第2回の続編として、もう少々オセアニア全体の伝統的貨幣もどきの話と、現在の島嶼国家の発行する通貨の話をしてみたい。 クラ交換(交易) おそらくは「クラ交易」の方が良く知られる名かもしれないが、私は「クラ交換」といった方が学術的には正しい…

第2回 サモアのお金、ファイン・マットの謎

西サモア*1に首長制の調査に行くことは、かねてより私の願望であった。当初ハワイ大学のスタディ・アブロード・ツアーに入れてもらって、およそ1ヶ月のサモア言語文化研修を終えた後、1978年6月には知人を頼ってサモアの村に住むようになったが、では実際に…

第1回 はじまり

オークランドの現代劇 2019年3月のオークランドは、時に寒い日もあるが、残暑を残しつつ晴天の気持ちよい日々が続いた。オークランド芸術祭の出品作のひとつである『クペの英雄航路』(アピラナ・テイラー作)の一人芝居が演じられたのもそんな日の昼間であ…

Copyright © 2019 KOUBUNDOU Publishers Inc.All Rights Reserved.